INTERVIEW インタビュー

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一般社団法人医療アートメイク学会 理事長 池田欣生 先生 インタビュー

一般社団法人医療アートメイク学会 理事長 池田欣生 先生 インタビュー

日本初の医療アートメイクイベント「医療アートメイクカンファレンス」が、10月17日に五反田TOC本館で開催されます。


同カンファレンスは一般社団法人医療アートメイク学会、一般社団法人日本メディカルタトゥー協会、医療アートメイクスクールBioTouch Japanの3団体が共同開催するもので、カンファレンスに先立ち一般社団法人医療アートメイク学会の総会も行われます。


この学会を設立した理事長であり、カンファレンス開催を行う池田欣生先生に、イベントの意気込みをうかがいました。


医療アートメイクの安全を高めて盛り上げたい!2017年に医療アートメイク学会を設立

 

もともと僕は、自分のクリニック(「東京皮膚科・形成外科」)で眉下切開の手術と同時にアートメイクを行っていました。その時のアートメイクは他の機関にお願いしていたのですが、2000年に「アートメイクは医療行為である」という通達※が厚生労働省から発出され、医療機関ではないところに紹介することができなくなりました。

 

そこで僕自身が、おそらく医師なかで初めてだと思うのですが、アートメイクの学校に行って勉強し、免許を取りました。おそらく、当時は日本で最初に医療機関で医師がアートメイクを行うクリニックであったと思います。


その後もアートメイクと眉下切開の同時施術を続けていました。僕は好きでやっているのですが、「医者がやって」と言われても、うちのクリニックの先生達はやりたがらないんですね。やはり手術のためにお医者さんをやっているので。


そういった状況があり、医師の監督のもと看護師さんがアートメイクを施術できる学会を作りたいと厚生労働省に働きかけました。

 

もう一つのきっかけは、学会設立前の2016年頃に、警察が違法アートメイクサロンの人々を医師法違反でどんどん逮捕していったことです。同時に、アートメイク用の針や機械を卸している業者も逮捕されて、器具が入手できなくなりました。


僕はよく海外に行くので、では海外から仕入れようと思って調べると、海外のアートメイクに使用する色素はかなり不透明で、発がん物質が入っているようなとんでもないものであることが判明したのです。


そこで「この色素は安全だ」とか「これは発がん物質が入っている」といったことを周囲に伝える必要性を感じましたが、自分一人の力で調べるのはちょっと難しい。それも学会で行いたいと思い、厚生労働省に掛け合いました。


※厚生省健康政策局医事課長通達(2000年6月)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6716&dataType=1&pageNo=1

 

 

アートメイクアーティストという新しい働き方を創造。一方で、学会の会員集めに苦労も

 

学会を設立して良かった点は、新しい職業をつくれたということです。今は看護師さん不足なのですが、医療アートメイクアーティストをやって収入が増えたという看護師さんは増加中です。


また設立当時は、医師法違反によって、アートメイク施術者が半分以上の割合で逮捕されていたのですが、今はだいぶ減りました。


昔は「アートメイク」をインターネットで調べると、違法行為サロンのホームページばかりが表示されましたが、今はおそらくクリニックばかりが出てくると思います。


これらの点で学会をやってすごく良かったと思います。

 

苦労している点は、会員集めです。いろいろな人にご協力をいただいて、社団法人を公益医療法人にする活動はしていますが、ある程度の人数がないとできないので、人数集めに苦労しています。また、僕としては新しいトラブルや治療などを啓蒙していきたいのですが、実際に入会していただいても全く勉強に来ていただけない方が多いです。


学会では、色素などの安心安全を啓蒙したいと考えています。まだまだあまりよくない色素を使用しているところも多いので、いま新しい日本製の色素を開発しています。

 

 

将来学会でやりたいことは法律の整備。タトゥーの安全性の確立や法整備にも意欲

 

今は実際に、お医者さんの監督のもと看護師さんがアートメイクを施術して良い、という条文がハッキリと明記されてないんですね。だからこの学会を盛り上げて、公益医療法人になって法律をつくることを目標にしています。担当省庁が変わってもトラブルにならないように、文章で明記する法律を作りたいと思っています。

 

また、医療アートメイクだけではなく、タトゥー(刺青)の法整備も行っていきたいと思っています。


タトゥーは反社のイメージが強く、学会創設や、学会のためのホテルの使用も拒否されますが、ちゃんと施術者に安全講習を行って、アレルギー発生率が10パーセントと言われるトラブルの多い海外製の色素を使用しないように、日本製の安全安心な色素を開発していきたいですね。


僕のクリニックではレーザー治療もやっているのですが、タトゥーを消すのには何百万円もかかるし傷跡も残る。だから、入れて嫌だったら簡単に消せるような色素や技術を、将来的に作っていきたいです。

 

 

アートメイクの技術向上をアピールし、医療アートメイクを世の中に広めたい

 

今までのカンファレンスは、お医者さんと看護師さんだけの勉強会のような形で行ってきましたが、今後は医療アートメイクをもう少し世の中に広めたいと思っています。


以前はアートメイク学会の人と比べてタトゥーの彫師のほうが上手いと言われていましたが、学会も5年目を迎えて看護師さんやお医者さんの技術力がすごく向上していることをアピールしたいですね。

 

セミナーでは、安全性についての内容を中心に、具体的にはトラブルの報告とそれを解消するためにどういうことをするかというような、最新情報について発表したいと思います。アートメイクでは感染によるトラブルが多く、今年起こったトラブルを調べて発表し、皆さんに啓蒙する予定です。


あとはアートメイクに限らず、それぞれのクリニックが独断で看護師に任せている部分の法律を作りたいと思っています。安全に施術するためにここまでは看護師さんでOKです、ここまではお医者さんの手が必要です、ということの発表をこれまでも毎回行っています。

 

コンテストでは技術的なところを競い合うので、実際に上手な人の技術を見ることができます。これは我々医者もみんな同意することなのですが、ちゃんと上手い人の手術を見るだけでもすごく勉強になるんですね。今後も毎回コンテストを開催して、継承もしていきたいと思っています。

 

 

医療アートメイク法案をつくるために、皆様の参加をお待ちしています

 

このイベントでは、我々みんなが技術を得るだけじゃなくて、お話ししたような法律をつくるための会員も募集しています。


厚生労働省に働きかけるための公益医療法人化には、もう少し会員数が必要です。今はあいまいなことも、法律に明記されれば堂々と行うことができます。


明日の医療アートメイク界を盛り上げるために、ぜひ医療アートメイクカンファレンスのご参加をお待ちしております。